ふっくら布ぞうりの会は、2011年に起きた東日本大震災の復興支援がきっかけでスタートしました。被災地から生まれたコミュニティ作りのノウハウが、今では首都圏でのユニバーサル就労支援活動に生かされています。

被災地の仮設住宅でのコミュニティ作り、生きがい作り、経済的支援につながる布ぞうり作り

ふっくら布ぞうりの会は、東日本大震災の復興支援から始まりました。2011年夏、被災した方々の生活の場が避難所から仮設住宅に移った頃、「近くに気軽に話せる人がいなくなってしまった」「いろんなことを考えて気持ちが落ち込んでしまう」「支援されてばかりで一歩が踏み出せない」など、住民のみなさんから多くの悩みが噴出していました。

そんなとき、新たなコミュニティ作り、生きがい作りにつなげようと、ボランティアが編み物や縫い物など様々なワークショップを企画しました。その中の1つが「布ぞうり作り」だったのです。

南三陸で行われた布ぞうり講習会をきっかけに、最初の編み手チーム「南三陸ふっくら会」が発足。彼女たちが作った布ぞうりは、東京での復興支援イベントなどで「かわいい!」「履き心地がいい!」と評判の人気商品になりました。

その後、陸前高田、石巻、東松島にもチームができ、ふっくら布ぞうりの会の活動が本格的にスタートしました。

布ぞうりを作ることは、心の癒しにもなりました

布ぞうりを作ることは、コミュニティ作りにとても役立ちました。

布ぞうりを作っているととても集中するので、その間はつらいことを考えずにすみます。また、みんなで集まったときも布ぞうりという共通の話題があるので「あらー上手!どうやったらそんなにつま先きれいに編めるの?」「その配色すごくいい!」など、布ぞうりの話で打ち解けられます。

また、震災当時は街から色がなくなり、見渡す限り土の色でした。「布ぞうりの日は色とりどりの布に囲まれるので、それだけでも気分が明るくなるのよ」という方もいました。布ぞうりを編むことは、心を癒す作業でもあったのです。

南三陸から始まった布ぞうりチームは、その後陸前高田、石巻、東松島にも広がり、東北の被災地で作られた布ぞうりを販売する「ふっくら布ぞうりの会」ができました。そして、楽しく作ることはもちろんですが、技術を上げて、買ってくださる方に喜んでいただける美しい布ぞうりを目指そう!と、最初から目標を高く掲げて活動していました。

2017年 活動を首都圏に広げ、ユニバーサル就労支援をスタート

震災から6年がたった2017年、これまで全国のみなさまからいただいたご支援に恩返ししていきたい。東北の編み手と東京のスタッフがふっくら布ぞうりの活動を通じて培ってきたノウハウや経験を、広く社会に還元していきたい。

そんな思いから、様々な難題を抱えた方たちの社会参加を布ぞうりで応援する活動を、首都圏ではじめることになりました。

現在では、両親の介護や病児の看護で働きに出ることができない方、発達障害をもつ方、コミュニティを求めている高齢者のみなさんと、それを応援する人たちが、支え合いながら編み手チームを構成しております。そして、ときどき東北からベテランの編み手をよんで、技術指導をしてもらっています。

社会参加のきっかけを探している方が布ぞうり作りに取り組むことで、コミュニティができ、生きがいをみつけ、かつ収入を得られるようになるよう応援しています。

首都圏の居場所作りサークルから生まれた新たなKIDS布ぞうりのブランド「ゆにっこ布ぞうり」

世田谷では、ふっくら布ぞうりの編み手チームのほかに、社会参加を目指す方のための居場所作りを目的とした布ぞうりサークルも実施しております。

ひとつは、ぷらっとホーム世田谷(世田谷区生活困窮者自立相談支援センター)での布ぞうりサークル、もうひとつは発達障害者就労支援センターゆに(UNI)での布ぞうり勉強会です。

ふっくら布ぞうりのように編み目がきれいにそろっていなくても、かわいい布ぞうりは作れます。

写真のように布を細くカットしてザクザクと編んでいくと、ふっくら布ぞうりとはまた違う、素朴な風合いの布ぞうりができあがります。

手作りのゆにっこ布ぞうり

そこで企画したのが、KIDS向けの「ゆにっこ布ぞうり」です。

最近では子供も足のトラブルを多く抱えていると言います。日頃足指をあまり使わないために扁平足になり、転びやすかったり、疲れやすくなったりする子が多いそうです。

そんなお子さんたちに履いていただきたい!と「ゆにっこ布ぞうり」という子供向けの布ぞうりを作りました。

完成のゆにっこ布ぞうり
  • 足指でしっかり掴んで履くため足指が使えるようになり、足裏アーチ(土踏まず)が戻り、扁平足の予防につながります。
  • 子供は足がすぐに大きくなるので、通常のふっくら布ぞうりよりお安くお求めいただけるよう、ご支援いただいた布や、ふっくら布ぞうりには使えない布を有効活用して作っています。
  • ふっくら布ぞうりのように編み目は揃っていないものもあり、ひとつひとつ形はいろいろですが、どれもたくさんの布を使ってしっかり編んでおりますので、履き心地は抜群です!
  • 施設の利用者さんたちは、サークル活動に参加しながら少額ではありますが編み代が支払われることになり、モチベーションがアップし、継続的に居場所に通えるようになることが期待できます。

関わる人たち、みんなにやさしい、みんなのためになる、ゆにっこ布ぞうりです。

ゆにっこ布ぞうりを幼稚園やサークルなどで履いてみたい!という団体や企業の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。

  • 「ゆにっこ布ぞうり」の名前は、ユニバーサル就労支援の活動から生まれたことから名付けました。
  • ユニバーサル就労支援とは

様々な理由で働きたくても働けずにいる全ての人が、その人なりの働き方ができるように支援することをいいます。