「ふっくら布ぞうりの会」では、さまざまな事情を抱えながらも、自分のペースで布ぞうりづくりに取り組む編み手のみなさんが活躍しています。今回、新しい編み手と出会い、育成するためのクラウド・ファンディング実施にあわせて、編み手のみなさんにお話をうかがいました。布ぞうりづくりに出会ったきっかけ、続けられている理由、暮らしの中で感じている変化、そしてこれから参加してみたい方へのメッセージ。

今回は、精神疾患で在宅を余儀なくされる息子さんを抱える母、編み手歴2か月、今まさにスタート地点に立ったDさんにお話を伺いました。

 

◆息子のために知った活動が、自分自身の挑戦に

 

── どのような形でこの「ふっくら布ぞうりの会」に出会われたのですか?

 

実は数年前から、息子がパニック障害を発症し、自室にひきこもる状態になりました。そのため、中間支援団体の相談窓口へ通っていたんですね。相談員の方から、こういう活動があると、息子にご紹介をいただいたのがきっかけでした。当初は、息子自身がやってみたいと言っていて、息子が活動に参加する予定でした。ですが、薬が合わずに体調を崩してしまって、息子ができなくなりまして。介添えするつもりで一緒に話を聞いていた母である私が、先にやってみようということになりました。

 

── 息子さんは、体調が悪化される前には、布ぞうりの編み手をやってみようという気持ちになってくださっていたのですね。

 

そうなんです。実際に、講習会でキットを購入して、家で一緒にやってみました。息子はミシンを家庭科の授業ぐらいでしか使ったことがなかったのですが、ミシンで鼻緒を縫ってみることはできました。ですので、余計に残念です。大学を卒業して就職した会社で大変なことがあったのかもしれません。コロナ禍ですべて在宅勤務となったのですが、会議などに徐々に参加ができなくなっていって、パニック障害との診断でした。

 

──息子さんが落ち着かれたら、一緒にできるといいですね。

そうですね、代表の工藤さんからも、わりと力のいる作業工程、例えば布を引っ張る作業などを一緒にできるといいですねと言っていただいています。相談員の方には自分でやってみたいと言っていたので、応援して待ちたいかなと思いますね。

 

── そうすると、母であるご自身も、布ぞうりに興味を持たれていたのですね?

そうですね。この話を聞いた時に、私もやってみたいなと思ったんですね。YouTubeを見るのが好きで、面白そうなものを見つけては作ってみたくなるタイプです。今までもいろいろとつくってきたのですが、布ぞうりにはすごく興味が湧きました。ただ、今まではいろいろなものを自己流で雑につくるようなことだったと思うので、丁寧につくるということは課題かもしれません。でもはやく上級者の方のように作れるようになりたいなと思っています。

 

──今はほかにお仕事をされているのですか?

いいえ、私は40代の後半から専業主婦をしてきました。親の介護のために、勤めていた会社を退職したんですね。働こうかと思ったこともあるのですが、年齢も重ねてきましたし、すごくガツガツ働くということを求めてはいなかったので。楽しく長く続けられそうな「布ぞうりの会」に出会えて、よかったです。

 

──出会ってからここまで、どんなことをされてきたのですか?

最初は講習会を受けまして。で、その時は色々ご自分で調べて参加した方々と一緒に行いました。そのときには、中間支援組織の担当者さんも一緒に講習を受けてくださったんです。で、その際にキットを持って帰って、家でも作ってみました。その後、こだわり編みというステップアップしたものがあるということを聞いて、それは頑張れば多少お小遣いにもなるのだということを知りました。その後、編み手さんの会に参加させていただきました。私が何か皆様のお役に立てることがあればという思いもあって、正式に「ふっくら布ぞうりの会」に参加することにしました。

 

◆久しぶりの社会とのつながりがもたらした変化

 

──それでは、準備が整って、いよいよスタートというところにいらっしゃるのですね。今のところはどうですか?

 

私はここ20年ぐらい専業主婦でずっと家にいましたので、今はとても新鮮で、久しぶりに社会に出る機会となっています。今までは、ほとんど家族と過ごし、元同僚や元同級生と年に何回か食事に行く程度でした。ですから、こうしていろいろな方とお話しすること自体が楽しいです。旅行や出張に行かれた話を聞くだけでも、ああすごいなと思って。息子が一緒にできないのは残念ですが、息子のことがあったから、こうして布ぞうりの会に出会えて、一歩踏み出せたとも思います。

 

 

──どんなところに魅力を感じますか?

布ぞうりづくりは、身に着けられたら細く長くできそうな感じがすごくよくて。ノルマがないということも安心して参加できます。でも、はやくたくさんお願いされるようになれたらうれしいですね。

長野の善光寺でやるマルシェ(びんずる市)で販売するとか、いろいろなイベントに出している様子をFacebookで見て、私もはやく上手になって、そういうところにも行ってみたいなとも思います。

 

◆家族を支えながら、自分のペースで参加できる場所

 

──ご家族にご状況があって、なかなか外へ働きに出られない方々に、もっと参加していただけるといいのですが、何かメッセージをお願いできますか?

 

布ぞうり作りはとても気分転換にもなりますし、社会とつながっているって感じがしています。介護などでは、やっぱり医師やケアマネさんなど、話す人たちが限られてきます。でもここでは、色々な情報や、たわいもないおしゃべりなども聞けるので、リフレッシュするんじゃないでしょうか。そう考えると、月に1〜2回、編み手の皆さんが集まる機会があるというのは、よい頻度だなと思っています。参加しやすいと思います。

 

──最後に、これから新しく参加される方へ、メッセージをお願いできますか?

 

周りの人たちがいろいろと教えてくださるので楽しくできると思います。仕事でもあるし、人のつながりも得られる場でもあります。それから、知らないことを知る機会にもなっています。娘が外反母趾なんですが、この布ぞうりが足に良いと聞き、娘にもその話をしました。足のトラブルで困っている人にふっくら布ぞうりをぜひ履いてほしいですね。
そして新しい編み手の方が増えて、もっとこの活動が広がっていくといいなとも思っています。